行 人 私 通所 夜 寒
『ホトトギス新歳時記 改訂版』には「秋、とくに晩秋、夜分になって寒さを感じることをいう。手足の先、首すじ、膝がしらのあたりが冷たく、火の気が恋しくなってくる。人などを送りに戸外に出てふと夜寒を感じることも多い」とあり、せまる冬を思う様子が目に浮かびます。
「三省堂デュアル・ディクショナリー」のWeb版『大辞林 第三版』で「夜寒」をひくと「類語情報」というボタンが出てきます。そこをクリックしたとき並ぶ語をよく見てみると「冫」「氵」が含まれた漢字が使われています(「寒」の下にある点二つももとは「冫」です)。
「氵」が水や川、液体などを表すのはご存じだと思いますが、では「冫」は??
『全訳漢辞海 第二版』で「冫」の部をひいてみると、「「冫」は「水が凍る」意で、気候の寒さにかかわることを表す」とあります。
さらにちなみに。「凄」という字はもともとは「さむい」という意味だったのが、「すさまじい。すごい。「すさまじ(=寒々としている。興ざめだ)」が、中世末期ころには程度がはなはだしい、ひどい、の意を表すようになり、同じ意味の「すごい」の表記にも用いられるようになった。「すごい」は現代ではすばらしい、の意にも用いられる」と書いてあるように、日本では意味範囲が拡大されて使われている字です。『漢辞海』にはこのように日本語だけの用法もしっかり記してあります。
「~寒」となるものには、「朝寒」「うそ寒」「肌寒」「漫ろ寒」など、秋の寒さを言う表現がたくさんあります。「朝夕一際冷え込むころ…」などの表現も同じころに使えます。
『大辞林 第三版』には「夜の寒さ。特に、秋の終わり頃、夜になって寒さを強く感じること。[季語]秋。《あはれ子の ─ の床の引けば寄る / 中村汀女 》」とあります。
入麺の下焚き立つる夜寒かな
芭蕉 「己が光」
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